蒼青まっさお)” の例文
歯医者はもう蒼青まっさおになって、酒の酔も覚めて了いました。震えながらきょろきょろと見廻して、目もくらんだようです。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いや、番頭の白い顔がちらとこっちを振り返ったのが見えた。てっきりその身の罪を告げている! とお作は思った。お作は顔を蒼青まっさおにしてぶるぶるとふるえた。
ネギ一束 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
子供の時、親爺の使嗾しそうで、夜中にわざわざ青山の墓地まで出掛けた事がある。気味のわるいのを我慢して一時間も居たら、たまらなくなって、蒼青まっさおな顔をしてうちへ帰って来た。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
挙げた顔——二十九歳の端麗な出雲守頼門は、蒼青まっさおになって、涙さえ垂れて居りました。
蒼青まっさおですか。……そうですか。客が野暮だから、化物に逢った帰途かえりでしょうよ。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
奥様は男を突退つきのけるすきも無いので、身をそらして、蒼青まっさおに御成なさいました。歯医者は、もう仰天してしまって、周章あわてて左の手で奥様のあごを押えながら、右の手で虫歯を抜くという手付てつきをなさいました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
春の月のすごきまで、蒼青まっさおな、姿見の前に、立直って
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)