蒼蠅あおばえ)” の例文
はえよ、蠅よ、蒼蠅あおばえよ。一つはらわたの中をされ、ボーンと。——やあ、殿、上﨟じょうろうたち、わしがの、今ここを引取るついでに、蒼蠅を一ツ申そう。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、蒼蠅あおばえだ、緑金りょくこんの点々々が真向から目をち、頬を撲ち、鼻を撲ち、口を撲ち、たちどころにまた紫の螺旋らせんの柱となって襲いかかった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
そうしてみると、学者も俗物も、ともにひと征伐せなければなりませぬ。されば、これより拙者は、俗論退治の大団扇うちわを心の土蔵中より取り出して、これらの蒼蠅あおばえを一掃してやりましょう。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
小児こどものつかった、おかわを二階に上げてあるんで、そのわきに西瓜すいかの皮が転がって、蒼蠅あおばえたかっているのをた時ほど、なさけない思いをした事は余りありません。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうして黙々と肢や脚をんでいる卓上の銀緑の蒼蠅あおばえにこれはと目をしかめた。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)