蒐集家しゅうしゅうか)” の例文
僕は時々陶器蒐集家しゅうしゅうかとして著名な或る友人を訪れ、様々の陶器をみせてもらうのだが、僕はそれらを比較し鑑賞する。必ず比較するのだ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
三、これに反し史家も蒐集家しゅうしゅうかも個人的作を偏重しているからである。四、そうして作家は個性の扉から外に出ず、民衆と没交渉でいるからである。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
名高い宝石蒐集家しゅうしゅうかの秘蔵の逸品ばかりを一粒ずつ貰い集めたかと思われるほどの素晴らしいもの揃いだったのです。
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
のみならず翁は蒐集家しゅうしゅうかです。しかし家蔵の墨妙のうちでも、黄金おうごん二十いつに換えたという、李営丘りえいきゅう山陰泛雪図さんいんはんせつずでさえ、秋山図の神趣に比べると、遜色そんしょくのあるのをまぬかれません。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
蒐集家しゅうしゅうかのところで、父の作になっている物に山田先生の作があった位で、一寸似た所がある。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
春信が明和二年始めて多数の板木を用ゐて錦絵を案出したりし当時の制作は最も上乗じょうじょうのものにして、仏国ふつこくの浮世絵蒐集家しゅうしゅうか中には特に明和二年板の春信のみを集むるものありといふ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「あの古代の宝玉というのは、有名な蒐集家しゅうしゅうかの遺族から預って、金を返す期限が二三日遅れたというので、涙を流して頼みこむ預け主へ、どうしても返さずに居た品物だというじゃないか」
判官三郎の正体 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
一人は外国人で、アメリカの富豪にして東洋美術品の蒐集家しゅうしゅうかマッカレーと云い、一人は一見外国人かと思われる堂々たる日本紳士で有名なる代議士花野茂はなのしげると云う名刺を示して商会主を驚かした。
真珠塔の秘密 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
ベチウスの河岸に住む日本美術の蒐集家しゅうしゅうかなぞの家族を知るように成った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
達摩だるま蒐集家しゅうしゅうかとして奇名隠れなかった理学士西芳菲山人の名が見える。
博覧強記で学識があり識見があり、漢学の造詣ぞうけいにも深いものがありました。それに蒐集家しゅうしゅうかで書画、古硯こけん、古陶、染織等の類は、見るべき品が数々ありました。
沖縄の思い出 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
あの土産はことの外仏蘭西人にめずらしがられて、ブロッスの老教授の手から彼方あっちへ三粒、是方こっちへ四粒と分けられたが、ある日本美術蒐集家しゅうしゅうかの庭には銀杏がえたという話のあったことを思い出した。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)