茗荷屋みょうがや)” の例文
この時根津ねづ茗荷屋みょうがやという旅店りょてんがあった。その主人稲垣清蔵いながきせいぞう鳥羽とば稲垣家の重臣で、きみいさめてむねさかい、のがれて商人となったのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「だが、まあいいや、久し振りでこっちへ登って来たから、鬼子母神きしぼじん様へ御参詣をして、茗荷屋みょうがやで昼飯でも食おうじゃねえか」
半七捕物帳:08 帯取りの池 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
江戸に渡ったのはいつ頃か知らぬが、享保きょうほう板の『続江戸砂子すなご』に軽焼屋として浅草誓願寺前茗荷屋みょうがや九兵衛の名が見える。
ここの停車場ステエションを、月の劇場の木戸口ぐらいな心得違いをしていた私たちは、のぼり万燈まんどうには及ばずとも、屋号をかいた弓張提灯ゆみはりぢょうちんで、へい、茗荷屋みょうがやでございます
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
歌麿の脳裡のうりからは、亀吉の影はうに消し飛んで、十年前に、ふとしたことから馴染なじみになったのを縁に、錦絵にしきえにまで描いて売り出した、どぶ裏の局女郎つぼねじょろう茗荷屋みょうがや若鶴わかづる
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
とにかく当座の宿をとってからの思案と、お米はその晩、中橋なかばしすじの茗荷屋みょうがやという家を選んだ。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「とにかく、叔父さんに相談があるから、茗荷屋みょうがやまで、来て貰いたいという意味をね」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはゆうべ会った陰女やまねこのお近と寸分も違わない、茗荷屋みょうがや若鶴わかづるの姿だった。
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)