いらだ)” の例文
群の燈火に飛び込むように、全主観の一切を投げ出そうとする、不断のいらだたしき心のあこがれ、実在のイデヤを追う熱情だった。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
とにもかくにも二本まで腹へさわられて大兵の男はいらだって、めん籠手こて、腹のきらいなく盛んな気合で畳みかけ畳みかけ、透間すきまもなく攻め立てる。
されば傾城もかくてはなるまじいと気をいらだつたか、つと地獄絵のもすそひるがへして、斜に隠者の膝へとすがつたと思へば
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
満枝は彼の枕をとらへてふるひしが、貫一の寂然せきぜんとしてまなこを閉ぢたるにますますいらだちて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「どうでもいいさ。結局。」白川はいらだたしげにかう云つた。
瘢痕 (新字旧仮名) / 平出修(著)
光榮得べき奮戰をめがけ激しくいらだつを。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
旅商人体たびあきゅうどていの男は最もいらだちて
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その苦しさといらだたしさとは、到底筆紙に説明することが出来ないのである。しかも表面はさりげなく、普通に会話して居なければならないのである。
僕の孤独癖について (新字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)