島原の乱の原因は、俗説では切支丹の反乱と言はれてきたが、今日、一般の定説では、領主の苛斂誅求かれんちゅうきゅうによる農民一揆と言はれてゐる。
島原の乱雑記 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
そして、屋根の破風はふというものがないから、掘立小屋みたいだ。王朝時代、多年苛斂誅求かれんちゅうきゅうに苦しめられた風が残っているためかも知れない。
淡紫裳 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
牛込見附外の大場石見というのは安祥あんしょう旗本の押しも押されもせぬ家柄ですが、房州の所領に、苛斂誅求かれんちゅうきゅうの訴えがあったために
だが人民は苛斂誅求かれんちゅうきゅう、新しい主人のしもとの下に、営々刻苦しなければならない。……諸侯は乱世の華だという! そうであろう、そうであろう。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
抗するにも、訴えるにも、何ら、法の庇護をもたないこの時代の無力の民は、どんな苛斂誅求かれんちゅうきゅうにも服すしかない。膏血こうけつをしぼっても、出さねばならない。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただでさえ今日は重税の負担に苦しんでいる国民が、これ以上の苛斂誅求かれんちゅうきゅう如何どうして耐ゆることが出来るか。
選挙人に与う (新字新仮名) / 大隈重信(著)
「——あんなに百姓や町人の窮迫している土地も珍しい、あれこそ苛斂誅求かれんちゅうきゅうというやつでしょうが、到るところ怨嗟えんさの声で充満しているという感じでしたからね」
日日平安 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
絶えまなく小競合こぜりあいを繰りかえす軍閥の苛斂誅求かれんちゅうきゅうと、土匪や、敗残兵の掠奪に、いくら耕しても、いくら家畜をみずかっても、自分の所得となるものは、何一ツなかった。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
公平無私な官吏かんり苛斂誅求かれんちゅうきゅうを事とせぬ政治家の皆無かいむだった当時のこととて、孔子の公正な方針と周到な計画とはごく短い期間に驚異的きょういてきな治績を挙げた。すっかり驚嘆きょうたんした主君の定公が問うた。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
祖父江出羽守そふえでわのかみ狩猟地かりちだった田万里は、殺生を好む出羽守のたびたびの巻狩まきがりと、そのたびごとの徴発、一戸一人のけ人足、荷にあまる苛斂誅求かれんちゅうきゅうのために、ついに村全体たってゆけなくなり
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
逃亡の理由にも色々とあつて、国守の苛斂誅求かれんちゅうきゅうをさけるだけなら隣国へ逃げてもよい。かういふ逃亡は走り百姓といつて中世以降徳川時代までつづいてゐた。
土の中からの話 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
例せばここに貪官汚吏どんかんおりあって苛斂誅求かれんちゅうきゅうを事とし、一村に対して一万円の負担を命ずる事ある場合に、仮りにその村民をしてその官吏に対し五千円の賄賂を贈り
婦人問題解決の急務 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
などと人心を暗きに落とし、課税の手段に至っては、いわゆる微に入り細に入り、特に農民方面へは、苛斂誅求かれんちゅうきゅうをこれ事とし、ために農民負担に堪えかね、一揆を起こし嗷訴ごうそをし
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
苛斂誅求かれんちゅうきゅうは政治の最悪なるものだ、その一つだけでも責任の価はきわめて大きい、これだけでも進藤主計の罪は死に当るだろう、そしてこれは、……これは初めから覚悟していたことなのだ、今日あることは……」
晩秋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
逃亡の理由にも色々とあって、国守の苛斂誅求かれんちゅうきゅうをさけるだけなら隣国へ逃げてもよい。こういう逃亡は走り百姓といって中世以降徳川時代までつづいていた。
土の中からの話 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
長沢権左衛門頭を上げろ! おのれ名主の身でありながら、支配内の百姓の辛苦を察せず、郡奉行手先と結托し、苛斂誅求かれんちゅうきゅうの手助けをなし、上にへつらい下をしいたげるさえ、不届き至極と存ぜしに
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)