めぐ)” の例文
未来の全生涯はすでにそこにめぐんでいた——しかしその内心の豊富さは、当座の間、狂妄きょうもうな行いとなってしか現われなかった。
「そうだ、はっきり形になって現われないうちは、頭の中にめぐんできたことは余り人に云いたくないものだ。」
二つの途 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
カタリ、と引くと、直ぐに囲いの庭で、敷松葉を払ったあとらしい、ふきの葉がめぐんだように、飛石が五六枚。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
新葉をめぐまない雑木林は、その枝を空へ帚木ははきぎのように延ばし、それを左右に打ち振った。また常盤木ときわぎの群木立は、去年のままの暗い緑を、さも物憂そうに顫わせた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「国法を犯すことがこわいというより、胎内にめぐんだものを枯らしてしまうことが恐しいのだ。」
山本有三氏の境地 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
いまは、やなぎめぐんだであらう——城崎きのさきよ。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)