)” の例文
舟人はを棄てゝ、手もて水をかき、われ等は身を舟中に横へしに、ララは屏息へいそくしてきびしく我手を握りつ。暫しありて、舟は大穹窿の内に入りぬ。
僕の乗った舟を漕いでいる四十恰好がっこうの船頭は、手垢てあかによごれた根附ねつけ牙彫げぼりのような顔に、極めて真面目まじめな表情を見せて、器械的に手足を動かしてあやつっている。
百物語 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
突然韃靼人だつたんじんが何やら聞き付けました。一体韃靼人といふ奴は、耳のさとい人間です。そこでわたくしも気を付けて聞いて見ました。どうも耳に漕いで来るの音が聞えるやうです。
その時舟をいでいる男が口を出した。「あしたは雨でございましょうね。ひどく山が近く見えますから。」こうって船頭はの手をめると、舟は音もせずに、ゆるやかに波の上を滑ってく。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
今は忙しいが波を切っています。11230
らふの火もともるらし、けよ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
舟若し高く岩頭に吹き上げられずば、必ず岩根にひて千尋ちひろの底にし沈めらるべし。われは翁と共にを握りつ。ジエンナロも亦少年をたすけて働けり。
の音がせわしく響いて、山岡大夫の舟は見る見る遠ざかって行く。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
らふの火もくゆるらし、を抜けよ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
老いたる方の漕手答へて、舟を停むべきところは、さきに漕ぎ出でしところの外たえて無ければ、是非とも島を一周せでは叶はずといひつゝ、うごかす手を急にしたり。