舟中しゅうちゅう)” の例文
とさけんだのは舟中しゅうちゅうの男だろう。ほかに人はだれもいない。またつづいて、やッ! という声がかかった、声というよりは気合いである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかれども詩情もまたおおき人たりしは疑う可からず。詩においては陶淵明とうえんめいし、笠沢りゅうたく舟中しゅうちゅう陶詩とうしを読むの作あり、うちに淵明を学べる者を評して
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
堤の下で「お乗りなさい」と言ったぎり、彼は舟中しゅうちゅう僕に一語を交じえなかったから、僕はなんのために徳二郎がここに自分を伴のうたのか少しもわからない、しかし言うままに舟を出た。
少年の悲哀 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
こうを渡る時、蛟竜こうりょう船を追う、舟中しゅうちゅうの人皆おそる、天を仰いで、嘆じていわく、我めいを天にく、力を尽して、万民を労す、生は寄なり、死は帰なりと、りょうを見る事、蜿蜓えんていの如く、眼色がんしょく変ぜず
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
その事の決したのが十二月二十九日で、専六が船の青森を発したのが翌三十日である。この年専六は十七歳になっていた。然るに東京にある養父源吾は、専六がなお舟中しゅうちゅうにある間に病歿した。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
霜百里舟中しゅうちゅうに我月を領す
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)