ふっく)” の例文
青月代あおさかやきが、例の色身いろみに白い、ふっくりした童顔わらわがお真正面まっしょうめんに舞台に出て、猫が耳をでる……トいった風で、手を挙げて、見物を制しながら、おでんと書いた角行燈をひょいと廻して
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
背後うしろに立ったのが、朝参あさまいり婀娜あだたる美人で、罪もなく莞爾々々にこにこしながら、繻子しゅすの不断帯の間から、ふっくりと懐紙に包んだ紙入を抜いて取り、てのひらに拡げて緋地ひじ襤褸錦つづれにしきの紙入を開いた中から
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
乳の下あたりふっくりとしたのは、鼻紙も財布も一所に突込つっこんだものらしい。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と云って、肩でわざとらしくない嬌態しなをしながら、片手でちょいと帯をおさえた。ぱちんどめが少しって、……薄いがふっくりとある胸を、緋鹿子ひがのこ下〆したじめが、八ツ口からこぼれたように打合わせの繻子しゅすのぞく。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)