腕節うでっぷし)” の例文
恐ろしい腕前だ、あの棒が一当り当ったら、こちとらのなまくらはボロリと折れて、腕節うでっぷしでも首の骨でも一堪ひとたまりもあるもんじゃねえ
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あんな身装みなりして、どこで何していたんだべや? 喧嘩好きで腕節うでっぷしの強い奴だったから、ろくなごとしてたんで無かんべで。」
熊の出る開墾地 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
そして柔道初段という刑事と、撃剣が三級という腕節うでっぷしの強い刑事とが、選ばれてその大鳥居の陰に身を隠しました。
若杉裁判長 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
結局、老夫人ケントがリキーをどうかしたらしいのであるが、あの弱々しい老夫人には似合わぬ腕節うでっぷしであった。
太平洋魔城 (新字新仮名) / 海野十三(著)
源右衛門『事をけて頼んでいるのに、どうしても通さぬと言うなら、腕立ては嫌いな源右衛門だが仕方もねえ。琵琶湖の浪で鍛え上げた腕節うでっぷし。押しても通るが、それで承知か』
取返し物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そりゃ何しろとんだ事だ、私は武者修行じゃないのだから、妖怪を退治るという腕節うでっぷしはないかわりに、幸い臆病おくびょうでないだけは、御用に立って、可いとも! 望みなら一晩看病をして上げよう。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それに腕節うでっぷしの強い男を向うにまわして、お対手をすると云うからには武術の心得があるか、それともふところに何か忍ばしているか。双子も立ちすくんでしまった。女はくるりと体の向きをかえて広巳を見た。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その太い腕節うでっぷしにはみみずのような血管がふくれている。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「親分、俺あお供は出来ねえかねえ。俺あ腕節うでっぷしは強くはねえ。又、喜蔵の様に軍師じゃねえ。が、お前さんの為には、一命を捨ててもいいと、心の内で、とっくに覚悟をめているんだ」
入れ札 (新字新仮名) / 菊池寛(著)