脹脛ふくらはぎ)” の例文
にんじんは、あおざめ、腕を組み、そして首を縮め、もう腰のへんがあつく、脹脛ふくらはぎがあらかじめひりひり痛い。が、彼は、傲然ごうぜんといい放つ——
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
足バカリジャナイ、コヽノ脹脛ふくらはぎダッテフックラシタ肉ガナクナッチマッテ、労働者ノ脚ノヨウナグリ/\ガ出来ルワ。
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「おいちょっとお借しの。」とそのうちでこと脹脛ふくらはぎの露出したのが我らにバットとボールの借用を申込んだ。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
肩から腕へ塗り附け、胸から腹へ塗り下げ、襟耳の裏、やがては太股ふともも脹脛ふくらはぎ、足の爪先まで、くまなく塗り廻しますると、真直まっすぐに立上りましたのでありまする。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鈍角が強引に引き裂いて行つた傷は石榴ざくろのやうに赤い肉をはみ出してゐた。血を見ると、腰から脹脛ふくらはぎにかけての神經がざわざわして來るのが駿介の平常だつた。
生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
「あゝ面倒臭い。」と、友染の湯もじの下から、細い脹脛ふくらはぎの折れかゞみの邊りまでを見せて、土間から直ぐに納戸への近道をして、高い上り口を一跨ぎにした。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
酔つた視線の中の敵とは、彼の足の脹脛ふくらはぎを目がけて土埃りをあげ、頸毛をふくらませて突進してくる一羽の牝鶏であつた。彼はいつぺんに悲しくなり、同時に非常に驚ろいた。
小熊秀雄全集-15:小説 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
初めはおれの脹脛ふくらはぎに咬みつきをつたが、紙束をおれに取りあげられてしまつたと感づくと、いやに哀れつぽい金切聲をたてたり、おべつかを使つたりしはじめたけれど、おれは構はず
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
中風をわずらったあげくの痕跡こんせきがまだそこに残っている。馬籠の駅長時代には百里の道を平気で踏んだほどの健脚とも思われないような、変わり果てた父の脹脛ふくらはぎが、その時半蔵の手に触れた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
二時間の後、用達ようたしに上高井戸に出かけた。八幡はちまんの阪で、誰やら脹脛ふくらはぎを後からと押す者がある。ふっと見ると、烏山からすやま天狗犬てんぐいぬが、前足をげて彼のはぎを窃とでて彼の注意をいたのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
第二弾は脹脛ふくらはぎの筋肉を少し切り裂いて引違えただけだった。