胆吹山いぶきやま)” の例文
ところは北上川の沿岸でもなく、恐山の麓でもありません、近江の国の琵琶の湖畔の胆吹山いぶきやまに向って、道庵先生がハイキングを試み出しました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
近江国では、浅井の岡が胆吹山いぶきやまと高さくらべをした時に、浅井の岡は胆吹山のめいでありましたが、一夜の中に伸びて、叔父さんに勝とうとしました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
我里は木曾の谷の、名に負ふ神坂みさかの村の、さかしき里にはあれど、見霽みはらしのよろしき里、美濃の山近江おうみの山、はろばろに見えくる里、恵那えなの山近くそびえて、胆吹山いぶきやま髣髴ほのかにも見ゆ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
百足山むかでやま昔に変らず、田原藤太たわらとうたの名と共にいつまでもおさなき耳に響きし事は忘れざるべし。湖上の景色見飽かざる間に彦根城いつしか後になり、胆吹山いぶきやまに綿雲這いて美濃路みのじに入れば空は雨模様となる。
東上記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
だが、自分としてはわざわざ古戦場見物に来たのではない、胆吹山いぶきやまの京極御殿へ帰らなければならないのだ。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そうして、四方取放しの竹轎たけかごを四人の者にかつがせて、悠然としてそれに打乗っている。前の場の石田との会見から垂井へ戻るにしては、胆吹山いぶきやまの方角が違っている。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
宇治山田の米友は、山形雄偉なる胆吹山いぶきやまを後ろにして、しきりに木の株根かぶねを掘っています。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あれが胆吹山いぶきやまでげしょう、胆吹山でないまでも、胆吹の山つづきには相違ござるまいテ」
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こんど近江の国の胆吹山いぶきやまというところの下へ、そのお嬢様が広大な地面を自分でお買いなすってね、そこへ一つの国をこしらえるんだそうです、何をしでかしなさるのかわからない。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
極めて微行しのびの形式で、関西の名所めぐりということになっているが、その実は、やっぱりあの胆吹山いぶきやまの麓に根を張っている、やんちゃ娘の女王様の動静が、さすがに親心で気にかかる
胆吹山いぶきやまというところは昔から落人おちうどの本場なんだから——そこをひとつ、念のために用心をして置いて下さいよ、一時にそううしおの押寄せるようにここまで押寄せて来るはずはなかろうけれども
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「それは、胆吹山いぶきやま上平館かみひらやかたの女王様とやらの、なされた法事でございます」
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
といって、全く聞捨てにもならないのは、この深夜、胆吹山いぶきやまの山腹で振絞る声なのですから、わざわざ好奇ものずきに、こんなところまで、こんなだらしのない絶叫を試みに来る奴があろうはずはないのです。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「近江の胆吹山いぶきやまから参りました」
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)