肩肘かたひじ)” の例文
それ故にこそ、とどのつまりは「うまいものでも食って」ということになった。世間に肩肘かたひじ張って暮すのも左様大儀な芝居でもなかった。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
万次はことごとくしおれ返っております。これが筋彫すじぼり刺青いれずみなどを見栄みえにして、やくざ者らしく肩肘かたひじを張っていたのが可笑おかしくなるくらいです。
すると、ひそかに想像していたよりも格段の落ちつきを持った一箇の権力が、彼の目の前に肩肘かたひじを張っているのだ。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
それに向って肩肘かたひじをはっていたような閑子を、昔からいろんな形でどれほどミネは啓蒙けいもうしたことか。そういう意味でならミネもまたひのえうまを問題にはしていた。
妻の座 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
小人数にわかれると肩肘かたひじ張った演説もできまいし、それに地方別ということが、自然話題を
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
荒磯あらいその描いてある衝立ついたての前で、いまこう、肩肘かたひじを張って叫び揚げた武士さむらいがある。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
まして憎からぬ人と肩肘かたひじ並べて働けば少しも仕事に苦しみはない。
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
鼈四郎はこう思って来ると夫妻の権威は眼中に無くなって、肩肘かたひじがむくむくと平常通り聳立そびえたって来るのを覚えた。「はははは、まこと料理ですかな」
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
平次はわだかまりのない態度でヌツと入りました。それに續くガラツ八、これは少しばかり肩肘かたひじが張ります。
やがてこのざわめきのなかに、浅黄刺子さしこの稽古着に黒塗くろぬり日の丸胴をつけた諏訪栄三郎が、多勢の手で一隅から押し出されると、上座の鉄斎のあから顔がにっこりとして思わず肩肘かたひじをはって乗り出した。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
平次はわだかまりのない態度でヌッと入りました。それに続くガラッ八、これは少しばかり肩肘かたひじが張ります。
令嬢たちの四つのひとみを受けて、鼈四郎はさすがにまぶしいらしく小さい眼をしばたたいて伏せた。態度はいよいよ傲慢ごうまんに、肩肘かたひじ張って口の煙草にマッチで火をつけてから
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そのあくる日から復一は真佐子に会うと一そう肩肘かたひじを張って威容いようを示すが、内心は卑屈ひくつな気持で充たされた。もう口は利けなかった。真佐子はずっと大人振ってわざと丁寧ていねい会釈えしゃくした。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
肩肘かたひじを張って、真四角にお辞儀をします。