罷業ひぎょう)” の例文
「そうだ、すっかり手当のことは忘れていた。いずれなんとかなるだろう。手当が出なけれや、今度はわれわれが罷業ひぎょうをするさ。」
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
従ってまた職工の解雇かいこされるのも四五万匹を下らないそうです。そのくせまだこの国では毎朝新聞を読んでいても、一度も罷業ひぎょうという字に出会いません。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
狼狽ろうばいした女記者の太い拳が彼女の眼前につきだされた。夜半の都会が同盟罷業ひぎょうのような閑寂さを感じさせた。
女百貨店 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
そしてある日、例のとおりひどく怒りたったために、全楽員の罷業ひぎょうが起ころうとした時、彼は辞職を申出た。
話を少し他に転ずるが、一八八九年ロンドン船渠ドックの労働者が同盟罷業ひぎょうをして世間を騒がしたことがある。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
「残った連中を煽動せんどうして、同盟罷業ひぎょうをやらせようと、さかんき廻っているということですが」
市内電車従業員の罷業ひぎょうのうわさも伝わって来るころだ。植木坂の上を通る電車もまれだった。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「徹底的にやれ、罷業ひぎょうになれば、火はかんから」戸口の外からだれかが怒鳴った。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
同盟罷業ひぎょうを討議中の労働組合総会の席上で、やにわにダフォデル水仙の栽培法を説き出したりなんかして、人をびっくりさせることも、その才能の一つとして公認されていなければならない。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
しかしみな罷業ひぎょうすれば講堂には出ない。政府は「授業をすればお金をやる」と声明したが、この言葉は彼にとっては非常に恨めしかった。まるで果実を見せびらかして猿を使うようなものである。
端午節 (新字新仮名) / 魯迅(著)
海港からは、拡大する罷業ひぎょうにつれて急激に棉製品が減少した。対日為替かわせが上り出した。銀貨の価値が落っこちると、金塊相場が続騰した。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
そして、この事が、ここに述べるところの、同盟罷業ひぎょう惹起じゃっきした。ブルジョアの番頭対、プロレタリア! 船では、ブルジョアは決してやとぬしとしてのその姿を労働者の前へ現わさなかった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
梶はフランスの罷業ひぎょうを目撃してからドイツ、オーストリア、イタリアを廻ってパリーへ帰ると友人に話したことがあった。
厨房日記 (新字新仮名) / 横光利一(著)
宮子の踊る踊場では、宮子を囲む外人たちが邦人紡績会社の罷業ひぎょうについて語っていた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)