縄尻なわじり)” の例文
旧字:繩尻
縄尻なわじりをひいた民蔵たみぞうの力に、伊那丸いなまるはあおむけざまにひッくり返った。ア——おいたわしい! とおもわず睫毛まつげに涙のさす顔をそむけて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
左の手に縄尻なわじりをとりて舞台へ来り「したに居ろ」といひて縄付なわつきを坐らせ、自分も下手に坐り、鮨桶を置き、肌を入れ鉢巻をとり
常吉の縄尻なわじりをとって、留五郎と岩吉が揚々と引き揚げて行った後は、度を失った一同が、恐る恐る上眼遣うわめづかいに、伝七をぬすみ見るばかりであった。
そのあいだに部下はいち早く、ピストル強盗の縄尻なわじりとらえた。そのあとは署長と巡査との、旧劇めいた愁歎場しゅうたんばになった。署長は昔の名奉行めいぶぎょうのように、何か云いのこす事はないかと云う。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
兵は味方よりはかるというが、あまり意外なことなので龍太郎は、呂宋兵衛の縄尻なわじりをとりながら、民部に向かってたずねてみた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、口癖にどなる捕手に縄尻なわじりを突かれて、峠の坂路を、暗い沼へすべってゆくような気持で、ひと足ずつ、名残おしい人々からも遠ざかってゆくのであった。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ふんじばってつれてきた、じゃおれは、梅雪とかけあいをつけるから、きさまが縄尻なわじりを持っていろ。なかなかわっぱのくせに強力ごうりきだから、ゆだんをしてがすなよ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)