綱吉つなよし)” の例文
その彼自身も、五代綱吉つなよしには、少年頃から愛されたが、まさか、八代の職をついで、将軍座に坐ろうとはおもわなかったことであろう。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
元禄げんろく時代の将軍家、館林たてばやし綱吉つなよし様が、ある時お手に入れられた所、間もなく江戸城お乗込み、将軍職に就かれたそうだ。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
特に五代綱吉つなよしから八代吉宗よしむねにいたる間は、将軍の自発性にもとづく京幕融和は間然するところがなく、尊王と幕府安泰とは背馳するどころでなく見えた。
尊攘戦略史 (新字新仮名) / 服部之総(著)
犬公方いぬくぼう綽名あだなをつけられている時の将軍綱吉つなよしの逆上は愈々その極点に達し、妖僧護持院隆光ごうじいんりゅうこうの言語道断な献言によって発令された、ご存じのあの軽蔑すべき生類憐しょうるいあわれみの令が
彼らは時の五代将軍綱吉つなよしが住むという大城に導かれた。百人番というところがあって、そこが将軍居城の護衛兵の大屯所だいとんしょになっていた。一行は命令によってその番所で待った。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
具体的にいうと、いま五代将軍の綱吉つなよしと、その生母の桂昌院けいしょういんが、何しろ非常な濫費家らんぴかだった。いや、金の作用というものを知らないのだ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……その後手に入れた綱吉つなよし公が、将軍職になりましたし、柳沢侯が出世しましたので、幸福の象徴となりましたが、しかし将軍綱吉侯は——大きな声では云えませんが、奥方の寝室ねやの中で暗殺され
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
将軍綱吉つなよしとても、多分に心を震撼しんかんされたここちであった。ものにさわるような鄭重さが、この一隠居と将軍家との対面に無言の気づかいを終始くばっていた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
綱吉つなよし将軍は、老公がけむたいし、老公は事々に、いまのみだれきった幕政に、眉をひそめていらっしゃる。その衝突を、ご自身からきれいにおかわしになったのであろう」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老公が職におられた時から、暗に老公のご献策をさまたげて、ご退職後は、わが世の春と、いよいよ思うままに綱吉つなよし将軍の歓心を捉え、まつりごとをわたくしせんとしている人間がある。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と当代の将軍綱吉つなよしの個性からくるものを、暗に、そしり嘆じる者も多い。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)