維也納ウインナ)” の例文
さてしばらくまどろんだと思ふ時分にくびの処に焼けるやうなかゆさを覚えて目をました。私は維也納ウインナ以来のしばしばの経験で直ぐ南京ナンキン虫だといふことを知つた。
南京虫日記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
維也納ウインナのホテルを思い出す。臨時に金井君を連れて歩いていた大官が手を引張ったのを怒った女中がいる。金井君は馬鹿気た敵愾心てきがいしんを起して、出発する前日に、「今夜行くぞ」と云った。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
私は維也納ウインナ留学中は寸暇を惜しんだので、自ら日本飯を焚くやうなことがなかつたが、ミユンヘンに来てはじめて媼からこの秘法を授かつたのである。
日本媼 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
僕は維也納ウインナで勉強をしていて、朝夕にこの大きな馬を見た。馬は、或る時は石炭を一ぱい積んだ車をひいていた。
玉菜ぐるま (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
私は志を抱いて維也納ウインナからミユンヘンに転学した当時は、部屋を得るに困難なこと如是によぜであつた。但し是は貧しい留学生の私を標準としての有様である。
南京虫日記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
その時計はだいぶ古くなって、神戸を出帆するとき神戸の時計店で弾機ばねを直した。それから維也納ウインナにいるときも、民顕ミュンヘンにいるときも度々その弾機を直した。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
これは、Schweigerシュワイゲル-Lerchenfeldレルヘンフェルト の撰で、西紀一八九六年に維也納ウインナから出版されたものである。僕は此の書物を愛して時々拾読した。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
僕は初めて維也納ウインナで冬を越したとき、宿の婆さんに頼んでようやく四角なブルキ製の湯婆を見付けてもらったのであったけれども、それではやはり駄目であった。
リギ山上の一夜 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
僕は維也納ウインナの教室を引上げ、きふを負うて二たび目差すバヴアリアの首府民顕ミユンヘンに行つた。そこで何や彼や未だ苦労の多かつたときに、故郷の山形県金瓶村かなかめむらで僕の父が歿ぼつした。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
心が落付かず街頭を急いで来ると計らず二人の日本人につた。一人は不思議にも維也納ウインナで知つた医者であり一人の老翁と一しよであつた。老翁は齢すでに古稀を越したT氏であつた。
南京虫日記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
このいきもつかず流れている大河たいがは、どのへんから出て来ているだろうかと思ったことがある。維也納ウインナ生れの碧眼へきがん処女しょじょとふたりで旅をして、ふたりして此の大河のながれを見ていた時である。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
おどおどと伯林ベルリンなかに居りし日のやすらぎて維也納ウインナに旅立たむとす
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)