累卵るいらん)” の例文
何という不祥ふしょうな出来ごとだろう。帝都の運命が累卵るいらんの危きにあるのに、その生命線を握る警備司令部に、この醜い争闘が起るとは。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
野望のぞみに向って突進し、累卵るいらん巌壁がんぺきになげうつような真似まねをして、身をほろぼしてくれねばよいが——と、思うての——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
累卵るいらんの危機を招くは必然でしょう。——それに張松は魏に使いしながら、帰途は荊州をまわって来たという取沙汰もある。旁〻かたがた、ご賢慮をめぐらし給え
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるに今やこの支那はまさに亡国の民たらんか、あるいは復活の民たらんかのちまたに立っている。即ち支那をこの累卵るいらんの危うきに救うべく一日の猶予もならぬ時である。
三たび東方の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
天下は累卵るいらん、危うくなったよ
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「御要心なされませ。何とか、ここの御危難をのがれる工夫をおとりなされませ。累卵るいらんの危うさにあるお身の上とは、とりも直さず、おふたり様の今のことです」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
累卵るいらんの危うさを見ているようです。ひとたびまたのへんでも生じましては、せっかくな御世みよ初めも」
先帝玄徳からの直臣じきしんや忠良の士もすくなくないとはいえ、遠隔の蛮地で、五十万がかばねと化し、孔明すでにあらずと聞えたら、成都の危うきは、累卵るいらんのごときものがある。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おまえも薄々は、今の朝廷の累卵るいらんの危うさや、諸民の怨嗟えんさは、聞いてもいるだろう」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわば京都の平和は、京都の中だけの小康しょうこうだった。——それもしいて天龍寺造営の名でかもされていた表面的な景気にすぎない——。むしろ累卵るいらんの危うさに似るものだったともいえる。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もし一髪いっぱつの私情にでも引かれたら彼の一門も明智と同じものになったろう。まさに累卵るいらんをささえたのである。しかし、外に善処ぜんしょし、内にはその危機を脱するまでの苦心は言葉に絶えたものがある。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その危うさは累卵るいらんにひとしいものがある。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「鎌倉は累卵るいらんの危うさ」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)