紡錘つむ)” の例文
油燈カガニェツはなんぞに怯えでもしたやうに顫へてパチパチと燃えながら、うちの中のわしたちを照らしてゐる。紡錘つむはビイビイと唸つてゐる。
またネルリの家長いへをさとヴェッキオの家長いへをさとが皮のみの衣をもて、その妻等が紡錘つむと麻とをもて、心にれりとするを見たり 一一五—一一七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「以前には、寝台の上の方に、四つの紡錘つむに取り付けた四角い板の天蓋があって、そのまわりに、緑色の縁のついた黄色い幕が垂れていたんです」
でも、母親が糸をつむいでいる間じゅう、この子はいつまでもそこにすわって、ぶんぶんいう紡錘つむと、ぐるぐるまわる車とをながめているのでした。
金製の紡錘つむでつついて怒らせ噛ましたといひ、第三の説によると空洞うつろになつたかんざしの中に毒を入れて常に髪に挿して居て、其の毒を仰いで死んだといふのである。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
糸が一定の長さに達すると、アムブロアジヌ婆あさんはそれを紡錘つむに巻きつけて、又羊毛を捩りはじめる。
もう夜になって小萩が来ても、手伝うにおよばぬほど、安寿は紡錘つむを廻すことに慣れた。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
四月の天気は温和でかすんでいた。銀色の霧の生暖かいとばり越しに、緑の小さな木葉このはがその新芽のつぼみを破っており、小鳥がどこかで隠れた太陽にさえずっていた。オリヴィエは思い出の紡錘つむを繰っていた。
意味もなくよりを掛けて紡錘つむに巻くに過ぎない。
その形紡錘つむに似て
生活のうるほひ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
彼女のお尻に女の使ふ紡錘つむくらゐの大きさの尻尾のあるのを見ただの、まだつい先々週の木曜日のこと、彼女が黒い猫に化けて道を走つて行つただの
針、紡錘つむを棄てゝ卜者となりし幸なき女等を見よ、彼等は草と偶人ひとがたをもてその妖術を行へり 一二一—一二三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
その脚は長く伸び、紡錘つむのように次第に細くなりながら、どこまでも続いている。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
雄々しい口髭を捻つて、靴の踵鉄そこがねの音も勇ましく踊りだしたものぢや! そのまた踊り方といつたら、両脚がまるで、女の手に𢌞される紡錘つむそつくりで
紡錘つむを持つて糸車のまへに坐るくらゐが分相応だよ! あれあ屹度、何だよ、誰かがおならをしたのか……それとも誰かのお尻の下で腰掛が鳴つただけのことさ。
なるほど、見れば、麻梳あさこきを前にして、紡錘つむを握つた女房が、ぼうつとして腰掛に坐つたまま、踊つてをるのぢや。祖父はそつとその手を掴んで、妻を揺りさました。
てんでに紡錘つむ麻梳あさこきを持つた娘たちが先づ一軒の家へどやどやと寄りつどふ。