へば)” の例文
銀子は何か頭脳あたまに物が一杯詰まっているような感じで、返辞もできずに、ねこが飼主にへばりついているように、栗栖の周囲まわりを去らなかった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
儒教や武家の教養から文芸を雕虫ちょうちゅう末技視して軽侮する思想が頭の隅のドコかにへばり着いていて一生文人として終るを何となく物足らなく思わした。
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
でも区役所は、失踪と相場も極まつて、表向き、通路の出来ぬ、親持つほどの御身分を、お忘れなされた僣上沙汰。栄耀の餅の皮は、あのくつきりと美麗しいお顔にへばり付いたやら。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
殿様は御病気の届けを致して置いて、貴方の家督相続が済みましてから、殿様の死去のお届を致せば、貴方は此家こちらの御養子様、そうするとわたくし何時いつまでも貴方の側にへばり附いていて動きません
切りひらいた地面に二むね四軒の小体こていな家が、ようやく壁が乾きかかったばかりで、裏には鉋屑かんなくずなどが、雨にれて石炭殻を敷いた湿々じめじめする地面にへばり着いていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)