籠屋かごや)” の例文
そこは保利橋のちょっと手前で、右側には炭薪商、籠屋かごや、桶屋などが軒をつらね、左側には八百屋、魚屋、繩蓆屋なわむしろや、石屋などが認められた。
醜聞 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
今日、市場いちばの方からランブュトー街へはいってゆくと、右手に、モンデトゥール街と向き合った所に、一軒の籠屋かごやがある。
HはS村の伯父おじを尋ねに、Nさんはまた同じ村の籠屋かごや庭鳥にわとりを伏せる籠を註文ちゅうもんしにそれぞれ足を運んでいたのだった。
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
疣々いぼいぼ打った鉄棒かなぼうをさしにないに、桶屋も籠屋かごやも手伝ったろう。張抜はりぬきらしい真黒まっくろ大釜おおがまを、ふたなしに担いだ、牛頭ごず馬頭めずの青鬼、赤鬼。青鬼が前へ、赤鬼が後棒あとぼうで、可恐おそろしい面をかぶった。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そしておたまのことも、——籠屋かごやのおたまは若くて遊廓ゆうかくへ身を売り、その後もみもちが悪く、親類じゅうに迷惑をかけたが、いまは行方知れずだということであった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
釣舟宿つりぶねやどの「千本」の三男のちょうから、私は老人のことを聞いた。その土地の出来事について、籠屋かごやのおたまと「千本」の長とが、つねにぬかりなく情報をれるのである。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そして籠屋かごやのおたまが、「おつゆちゃんは十二で——」うんぬんと報告した娘の家の綿屋も、やはり失敗してどこかへいってしまい、その家もまた空家になっていたのだ。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)