筋目すじめ)” の例文
自分は筋目すじめの家柄ではあるが、まだ評定役ひょうじょうやくでしかないし、それに考えることもあるので、重臣会議にはなるべく出ないようにしている。
その二枚も、他家よそへお遣いものをしたときに器物に入れてくれた半紙をしまっておいたものなので、筋目すじめがついたり、しわがよったりしているものばかりだった。
於犬の如きは、同じ筋目すじめの者でありながら、本能寺直後には、立ちどころに、態度をかえ、秀吉ずれに、こびを売って、身の栄達に汲々きゅうきゅうたる——文字どおりの犬でござる。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甲斐かいのくに古府城では、筋目すじめただしい家の娘たちが選まれて、代る代るお城へあがって草鞋を作ったりむしろを編んだりするならわしがあった。
石ころ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ふと蝋燭ろうそくほのおを見て、ジイと心耳しんじを澄ます様子であったが、何思ったか、不意に、一刀のさやを払って畳の筋目すじめ逆持さかもちにさきを向け——ブスッと、つばきわまで突き通した。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
客はきまっていなかった。原田は「筋目すじめ」といって、国老になる家柄であり、柴田郡船岡で四千二百石ほどの館主たてぬしである。つまり重臣のひとりだから、つきあいもひろいが、甲斐は誰にも好かれていた。