竹箆たけべら)” の例文
ただ黒いかめを一具、尻からげで坐った腰巻に引きつけて、竹箆たけべら真黒まっくろな液体らしいものを練取っているのですが、粘々ねばねばとして見える。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ますの底から周囲まわりまで竹箆たけべらで油をこすり落して、一滴たりとも買い手の利益になるように商売をなさいますので、人々がみな尊敬いたしました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
砂利場使いのパイスケ二百本ぐしが一人前の仕事。舟から河岸へ一荷ごとに担いでゆく度、小頭から竹箆たけべら一本ずつ渡されて、それが夕方の勘定高になる。
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寂しい心のたつじいさんは、冬至が過ぎれば日が畳の目一つずつ永くなる、冬のあとには春が来る、と云う信仰の下に、時々竹箆たけべらで鍬の刃につく土を落しつゝ
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
小さい台附の竹箆たけべらで土人形を戴せたボール板を弾き飛ばし、土人形を落さぬよう射飛ばすボール板で標的に当てることをこども等にさせては人寄せする「大学校の先生」という玩具売りの露店などを
美少年 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「福島樣は幸ひ御裕福で、三年經つてもお困りの樣子もございませんが、私共は御覽の通りの有樣、その上兄の病氣で、何も彼も賣り盡し、耻かし乍ら、刀の中味まで、竹箆たけべらに代るやうな淺ましい此の頃でございました」
あいつを左腰から帯へ突出してぶら下げた形といっては——千駄木の大師匠に十幾年、年期を入れた、自分免許の木彫の手練でも、洋杖は刀になりません。竹箆たけべらにも杓子しゃくしにもならない。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、自分の竹箆たけべらを減らして、数の少ない左次郎の方へ足してくれる。
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「福島様は幸い御裕福で、三年経ってもお困りの様子もございませんが、私どもは御覧の通りの有様、その上兄の病気で、何もかも売り尽し、恥かしながら、刀の中味まで、竹箆たけべらに代わるような浅ましいこの頃でございました」
広間の壁には、竹箆たけべらで土を削って、基督キリストの像が、等身に刻みつけていてあった。本箱の中も、残らず惨憺さんたんたる彩色画さいしきがで、これは目当の男のない時、歴史に血を流した人を描くのでした。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それが、竹箆たけべらられたんですか」
此処ここにそれ、はじめの一冊だけ、ちょっと表紙に竹箆たけべらの折返しの跡をつけた、古本の出物でものがある。定価から五銭引いて、ちょうどにつばを合わせて置く。で、孫に持って行ってるがい、とさばきを付けた。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それが、竹箆たけべらられたんですか」