端的たんてき)” の例文
バクチの方では干将莫耶かんしょうばくやつるぎでござんしてな、この賽粒の表に運否天賦うんぷてんぷという神様が乗移り、その運否天賦の呼吸で黒白こくびゃく端的たんてきが現われる
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それをもっと端的たんてきに「詞は古きをしたひ、心は新しきを求め、及ばぬ高き姿をねがひて、寛平以往の歌にならはば自づからよろしき事もなどか侍らざらむ」
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
端的たんてきな事実と組み打ちをして働らいた経験のないこの叔父は、一面において当然迂濶うかつな人生批評家でなければならないと同時に、一面においてははなはだ鋭利な観察者であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
梁川君は端的たんてきに其求むるものを探し当てゝ、堂々と凱旋し去った。鈍根どんこんの彼はしば/\とらえ得たと思うては失い、つかんだと思うては失い、今以て七転八倒の笑止な歴史を繰り返えして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
端的たんてきに云えば、君は母性慾に燃えているのだ。君の自分の血を分けた子孫を
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ひどい奴になると、四家御預おあずけ中の義士が、助命となるか、死罪となるかで、かけをしている町人があるし、もっと端的たんてきで熱ッぽいのは、しばしば、そのことから、喧嘩沙汰までおこすのだった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
れをくずして走ってゆきながら、こんな端的たんてきなことばを口々に投げた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
試みに彼に向って自由なる精神生活とはどんな生活かと問えば、端的たんてきにこんなものだとはけっして答えない。ただ立派な言葉を秩序よく並べ立てる。むずかしそうな理窟りくつ蜿蜒えんえん幾重いくえにも重ねて行く。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)