きわま)” の例文
「大風の中より」というはいかなる状態を指したのであるか知る由もないが、エホバの声はとかく人の道がきわまった時に聞ゆるものである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
小西の運命明日にきわまったりと、一同心おごりしたために、その夜、春照高番の宿で、前祝いのバクチをやったのが運の尽きでありました。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
淡紅濃白、歩ムニ随テ人ニブ。遠キハ招クガ如ク近キハ語ラントス。まま少シク曲折アリ。第一曲ヨリ東北ニ行クコト三、四曲ニシテ、以テ木母寺ニ至ツテきわまル。
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ほんとうをいうと彼れは始めからこの建物がそれにちがいないと思っていたが、這入るのがいやなばかりに知らんふりをして通りぬけてしまったのだ。もう進退きわまった。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
全く形をなさないこの家の奇怪な生活と、変幻きわまりなきこの妙な家庭の内情が、朝から晩まで恐ろしい夢でも見ているような気分になって、僕の頭にたたってくるんです。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いよいよ進んでいよいよ楽しく、いよいよたのしんでいよいよきわまらざる者、文学の特色なり。
病牀譫語 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
お父様とわたくしと参りまする積りでございます、それに良石和尚の智識なる事はかねて聞き及んではいましたが、応験解道おうけんげどうきわまりなく、百年先の事を見抜くという程だと承わっておりまするが
彼はこの時この世にありて絶対の孤独境に入ったのである。しかしながら物きわまれば道おのずから通ずる。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)