空様そらざま)” の例文
旧字:空樣
この句も其角がある年初めて鶯の初音を聴いた、その時鶯は尾を空様そらざまに足は枝を踏まえて身を逆様にして啼いたというのであります。
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
またかの筍掘たけのこほりが力一杯に筍を引抜くと共に両足を空様そらざまにして仰向あおむきに転倒せる図の如きはまこと溌剌はつらつたる活力発展の状をうかがふに足る。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これは不断片附けてある時は、腰掛が卓の上に、脚を空様そらざまにして載せられているのだが、丁度弁当を使う時刻なので、取り卸されている。
食堂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
すると真闇まっくらな道のはたで、たちまちこけこっこうという鶏の声がした。女は身を空様そらざまに、両手に握った手綱たづなをうんとひかえた。馬は前足のひづめを堅い岩の上に発矢はっしきざみ込んだ。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
峰の松原も、空様そらざまに枝を掻き上げられた様になって、悲鳴を続けた。谷からに生えのぼって居る萱原かやはらは、一様に上へ上へとり昇るように、葉裏を返してき上げられた。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
峰の松原も、空様そらざまに枝を掻き上げられた様になつて、悲鳴を続けた。谷から尾の上に生え上つて居る。萱原は、一様に上へ/\とり昇るやうに、葉裏を返してき上げられた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)