空威張からいば)” の例文
ただ気違いじみた空威張からいばりから、手にしたつえで、ちょうど愛妻の死骸が内側に立っている部分の煉瓦細工を、強くたたいた。
黒猫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
空威張からいばりと皮肉と悲痛との交じり合ってる様子だったが、激しやすい大袈裟おおげさな率直なしかもたえず人生に欺かれてる精神が、その下に隠れていた。
が、そんな困難に辟易へきえきするようでは、上は柿本人麻呂かきのもとひとまろからしも武者小路実篤むしゃのこうじさねあつに至る語彙ごいの豊富を誇っていたのもことごとく空威張からいばりになってしまう。
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
うそを言っているのでさえなければなあ。いや、おれは今どうか嘘をついたり、空威張からいばりをしたりはしたくないものだ。
空威張からいばり——肩で風を切って、とんがり長屋の路地を出てゆく。もうこうなると、長屋の連中は強気つよき一点ばりで
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ソコデ私の見る所で、新政府人の挙動はすべて儒教の糟粕そうはくめ、古学の固陋ころう主義より割出して空威張からいばりするのみ。かえりみて外国人の評論を聞けば右の通り。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
子供の時から、侍の世界の、虚偽と空威張からいばりと馬鹿馬鹿しさを聴かされて育っているのである。
何かと空威張からいばりをしてみても、やはり声をひそめてこそこそしていたことが、俄に頭に映ってきた。そして自分自身に腹が立ってきた。そのままでは済せない気になった。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そんな空威張からいばりしたって、損だよ。政府だって、血も涙もあるんだから、恩恵に浴してはどうかね? 便法があるが。……科料は大したことはないけど、前科がつくし、第一、罰金を
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
ことに虚栄的な怠惰の一形式であった——知的労働はあらゆる労働のうちで、最も点検しがたいものだったし、最も空威張からいばりのきくものだったから。
おとなげなく感情に走りすぎたような点も多かったし、ただ昨日の癇癪かんしゃくのなごりにすぎないような点も、ただの空威張からいばりにすぎないような点も多かった。
空威張からいばりするように見えるかもしれません——が、まったくほんとうの話なんです、——私は、こうして死ぬのはなんというすばらしいことだろう、そして
大袈裟おおげさな言葉や羽根飾り、ブリキの剣と厚紙のかぶととをつけた芝居がかりの空威張からいばり、そういう扮装ふんそうの下にはいつも
彼は、ゲルマン風の感傷性と、パリー人的な空威張からいばりと、生来の自惚うぬぼれとが、不思議に混合してる人物だった。
けれども彼は、そういう空威張からいばりの危険な無益さを認むることにおいては、あえて人後に落つるものではなかった。ただ時々彼はめちゃな気持になるのであった。