空々そら/″\)” の例文
彼はその料理屋へ尋ねて行き、いまだに白粉おしろいの厚い彼女と一時間ばかり話をした。が、彼女の空々そら/″\しいお世辞に幻滅げんめつを感ぜずにはゐられなかつた。
貝殻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
とすると、今度の戦争は有史以来特筆大書すべき深刻な事実であると共に、まことに根の張らない見掛倒しの空々そら/″\しい事実なのである。(つゞく)
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「俺もそんな事だらうと思つたよ。二人の惡口の言ひ合ひは、あんまり度を過ぎるから、反つて空々そら/″\しく聽えるんだ」
お神さんには、たゞの一と言も、あたしのことを云ひ置いて行かなかつたつていふんだけど、「来たら、よろしく」なんて云ふ方が、却つて空々そら/″\しいかしら……。
モノロオグ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
ると、宛然まるで空々そら/″\しい無理むり元氣げんきして、ひて高笑たかわらひをしてたり、今日けふ非常ひじやう顏色かほいろいとか、なんとか、ワルシヤワの借金しやくきんはらはぬので、内心ないしんくるしくるのと、はづかしくところから
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
もう一度家の中に入つて、内儀のお加奈にも逢ひましたが、空々そら/″\しくないほどにしをれて、今日はさすがに、あの凄い角度を覗かせません。下女のお徳は平凡な四十女でこれは何んにも知らず。
燃えるやうに——といふ言葉は、決して空々そら/″\しい形容ではありません。梅干大の夜光の珠は、宇宙うちう創造の神秘を籠めた、プロメトイスが盜んだ坩堝るつぼの焔のやうに、全くメラメラと燃えて居るのです。
などと、よくも斯う空々そら/″\しい事が言へるかと思ふ程です。
空々そら/″\しい文句です。