稀々まれまれ)” の例文
それが稀々まれまれにはこういう事実も伝えられて、いよいよ真面目まじめなる女たちの、日ごろのたしなみの内にかぞえられていたのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
初めから稀々まれまれにしか見なかった父宮であったから、今は第二の父と思っている源氏にばかり馴染なじんでいった。
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
非常に不満のていにてい来る事も稀々まれまれなりしが、妾はなおそれとは気付かず、ただただ両親兄弟に対し前約を履行りこうせざるを恥ずるが故とのみ思い取りしかば
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
稀々まれまれに意外な暴威を振うのを実験した者が、これを神秘の力に帰するようになったので、他所の飢えたる鼠の群が、海を渡って入ってくる時などに
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
祭の物忌は今日は一般に省略に傾き、有れども無きに近い宮社が多い中に、なお稀々まれまれにはその旧例を厳守して、是をもって名を伝えているものが幾つかある。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
主たる用途は薬もしくは呪法じゅほうであったが、なお稀々まれまれにはこれを食餌しょくじきょうすることもあった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
歴史には尼将軍あましょうぐんよどかたという類の婦人が、稀々まれまれには出て働いておりまして、国の幸福がこれによって左右せられたこともありますが、こういう人たちをわが仲間のうちと考えて
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
もしくは今一段と稀々まれまれにしかおこらぬ事件で、人がそのために全力をふるい、精魂をつくして働かねばならぬようなさいにも、やはりふだんとはまったくちがった食べ物を用意し
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この山中にはいつのうつありて、その下に黄金を埋めてありとて、今もそのうつぎの有処ありかを求めあるく者稀々まれまれにあり。この長者は昔の金山師なりしならんか、このあたりには鉄を吹きたるかすあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)