私方わたくしかた)” の例文
「御三男様御作吐舌したをはき申候。被仰候事を被仰下、辞気藹然じきあいぜん感じ申候。私方わたくしかたくわん三も十五になり候。詩少しつくらせ候へ共きこえ不申候。」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
茂「幸兵衛は坂本二丁目の経師屋きょうじや桃山甘六もゝやまかんろくの弟子で、其の家が代替りになりました時、いとまを取って、それから私方わたくしかたに居りました」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一面には食物問題の研究となり一面には家族的の交際となって何ほどの利益だか知れません。現に今日のごときも私方わたくしかた心持こころもちでは大原満君の送別会を兼ております。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
同道致しまして、お宅さまへ出ますが、何処へもお渡しなく私方わたくしかたへお譲りが出来ましょうか
大切な御用とはういう筋かは知りませぬが、友さんは十四日の夕景、蟠龍軒一味の者にさん/″\な目に遇いましてな、可愛相かわいそうに身体も自由にならないで、私方わたくしかたへ泊りました、で
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
立「まアしからぬ仰せでございます、余計な事を申すようでございますが、友之助は御覧の通り疵だらけ、十四日夜はさん/″\たれて動きが取れませず、私方わたくしかたへ泊り込んだのでございます」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
神君しんくん御帰依ごきえ摩利支尊天まりしそんてん御影みえいをお仕立になる時、此のきれもってお仕立になり、それを拝領した旗下はたもとが有って、其の切を私方わたくしかたで得てこしらえた萠黄金襴の守袋で、此れを金入にしては済まん訳だが