神隠かみかく)” の例文
南家の郎女が神隠かみかくしに遭つたのは、其夜であつた。家人は、翌朝空が霽れ、山々がなごりなく見えわたる時まで、気がつかなかつたのである。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
いかにしても見つからぬというのが神隠かみかくしで、これに対しては右のごとき別種の手段が、始めて必要であったのだが、前代の人たちは久しい間の経験によって
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
生れつき愚鈍ぐどんのために、何者かに強迫されて、江戸くんだりまで、連れて行かれ、つい五、六日前、神隠かみかくしにったように、ボンヤリと、この小屋へ戻って来たのだ
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
云はば日本の神隠かみかくしに、新解釈を加へたやうなものです。これはそのビイアスが、第四の空間へはひる刹那せつなまでも、簡勁かんけいに二三書いてゐる。ことに或少年が行方ゆくへ知れずになる。
近頃の幽霊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ほんとうに神隠かみかくしにでも逢った様な気がします。警察のほう内々ないないで捜索を願ってあるんですし、主人を始め出入の方も手分けをして方々ほうぼう探しているのですけれど、まるで手がかりがありません。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
神隠かみかく
八 黄昏たそがれに女や子供の家の外に出ている者はよく神隠かみかくしにあうことはよその国々と同じ。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)