砕片かけら)” の例文
旧字:碎片
あるひは私の拾ひ得たものは瓦と石の砕片かけらで、さうして他に貴重なものがこぼれてゐたと言つた方が適当かも知れないのである。
忘春詩集:02 忘春詩集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
勿論もちろんかれ仲間なかまだけがことにさうだとはへなかつた。見渡みわたしたところ、人間にんげんみんひとつ/\の不完全ふくわんぜん砕片かけらであるのに、不思議ふしぎはないはずであつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
慇懃まめやかに勧めた。が、主人はそれを顧みもせずやっぱりこわれた猪口の砕片かけらをじっと見ている。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
また不断に、彼の身辺に飛び散る砕けた石の砕片かけらが、その目を傷つけたためでもあろう。彼の両目は、朦朧として光を失い、もののあいろもわきまえかねるようになっていた。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
博光丸は北緯五十一度五分の所まで、錨をなげてきた第一号川崎船を捜索した。結氷の砕片かけらが生きもののように、ゆるい波のうねりの間々に、ひょいひょい身体からだを見せて流れていた。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
明徳利あきどくりの横面いきなりたたき飛ばせば、砕片かけらは散って皿小鉢おどり出すやちんからり。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
刳貫の入口に着いた時、彼はそこに、石の砕片かけらを運び出している石工に尋ねた。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
砕片かけらをつげるある。
忘春詩集:02 忘春詩集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
砕片かけらは散つて皿小鉢跳り出すやちん鏘然からり
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)