知邊しるべ)” の例文
新字:知辺
片鬢かたびん禿げた乞食の爺いが、中氣で身動きも出來なくなつたのを、綺麗な若い女が來て、知邊しるべの者だからと引取つて行つたさうですよ。
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
此日は、源助が半月に餘る旅から歸つたので、それ/″\手土産を持つて知邊しるべの家を𢌞らなければならぬから、お吉は家が明けられぬと言つて、見物は明日に決つた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
十四歳の時伯父の知邊しるべである或る相場師の養女になつてY町に來たのであつた。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
……そのうち場所ばしよことだから、べつあひでもないが、柳橋やなぎばしのらしい藝妓げいしやが、青山あをやま知邊しるべげるのだけれど、途中とちう不案内ふあんないだし、一人ひとりぢや可恐こはいから、にいさんおくつてくださいな、といつたので、おい
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
權八は國に居る頃——まだ前髮も取れない中から勝負事にり、それで祖先傳來の土地まで質に入れ、年取つた母一人を留守に、自分は江戸の知邊しるべを頼つて奉公に出た相ですから
知邊しるべを尋ねて江戸に入り、新鳥越の呉服屋、越中屋金六といふのに奉公して、親の敵討ちは叶はずとも、せめて父祖の家、榮屋を再興する念願に燃えて、一生懸命働いてをりましたが
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)