真事まこと)” の例文
旧字:眞事
「嘘から出たまこと」でも「真事まことから出たウソ」でもそのままソックリ写し出して、鼻の表現の邪道の研究範囲を狭くして行きます。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
同じ寄宿舎にいた信輔は或時彼に真事まことしやかにバイロンも亦リヴィングストン伝を読み、泣いてやまなかったと言う出たらめを話した。
奥の四畳半で先刻さっきからおきんさんに学課の復習をしてもらっていた真事まことが、突然お金さんにはまるで解らない仏蘭西語フランスごの読本をさらい始めた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
バイロンが英国を去る時の咏歌のうちに、「誰れか情婦又は正妻のかこちごとや空涙そらなみだ真事まこととし受くる愚を学ばむ」と言出いひだしけむも、実に厭世家の心事を暴露せるものなる可し。
厭世詩家と女性 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
バイロンが英国を去る時の詠歌の中に『誰か情婦又は正妻のかこちごとや空涙そらなみだ真事まこととして受くる愚を学ばむ』と言出でけむも、実に厭世家の心事を暴露ばくろせるものなるべし。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そういう奴がどんどん降り掛けて来るという話だけ聞いた分にはとても信じられんけれども、今幾分か残って居るのを見てもその大きさが鳩の卵ほどあるのですから真事まことであると信じられたです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
お豊は、それを真事まこととして聞かなかったが、この時
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
はい如何いかにも商売の暇なのは真事まことですが
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
けれども今のところ財力の上で叔父叔母に捧げ得る彼の同情は、高々真事まこと穿きたがっているキッドの靴を買ってやるくらいなものであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
母は「風月」の菓子折につめたカステラを親戚しんせきに進物にした。が、その中味は「風月」所か、近所の菓子屋のカステラだった。父も、——如何に父は真事まことしやかに「勤倹尚武」を教えたであろう。
彼は眼を落して真事まことの足を見た。さほど見苦しくもないその靴は、茶とも黒ともつかない一種変な色をしていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
父も、——如何に父は真事まことしやかに「勤倹尚武」を教へたであらう。