看客かんきゃく)” の例文
ここで後見こうけんがおれば、太夫さんのために面白おかしく芸当の前触れをして看客かんきゃくを嬉しがらせるだろうけれど、米友にはさっぱり後見が附いていません。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この時演劇は既に今日こんにち吾人ごじん目睹もくとするが如く、セリだしまわり道具、がんどうがえし等あらゆる舞台装置の法を操座あやつりざより応用し、劇場の構造看客かんきゃくの観覧席をもまた完備せしめき。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
魔術師は看客かんきゃくの目の前で生きた女を胴切りにしたり、箱詰めの小女こおんなつるぎ芋刺いもざしにしたり、彼女を殺害して鮮血したたる生首を転がして見せたり、あるい立所たちどころに人を眠らせ、自由自在の暗示を与え
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その勢い、いかにも殺気満々たるものですから、誰もうかとは手出しができないでいるうちに、看客かんきゃくの中の気の弱いのは、先を争うて逃げようとする。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
男女烏合うごうを集めて芝居をしてさえもし芸術のためというような名前を付けさえすればそれ相応に看客かんきゃくが来る。田舎の中学生の虚栄心を誘出さそいだして投書をつのれば文学雑誌の経営もまた容易である。
持って来た番付を押開いて、高く掲げて看客かんきゃくに警告したのは大いにき目があって、すべての看客がおのおの携帯の番付を照らし合わせて見ると、なるほど、の違いがある。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)