相形そうぎょう)” の例文
お前が、さも新吉の凄じい権幕におびえたように、神経のこわばった相形そうぎょういて微笑わらいを見せながら、そういって私の部屋に入って来た。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
案ずるより生むが易いといったていで、先刻さっきからの憂いが深刻だっただけに、彼は相形そうぎょうをくずして、子に甘い半面をむき出しに見せていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と何の苦もなく釿もぎ取り捨てながら上からぬっと出す顔は、八方にらみの大眼おおまなこ、一文字口怒り鼻、渦巻うずまき縮れの両鬢りょうびんは不動をあざむくばかりの相形そうぎょう
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
泰軒があぶない! と見て踏み出した栄三郎も、眼前に立ち現われたこの侍の相形そうぎょうには、思わず愕然ぎょっとして呼吸を切った。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
白砡はくぎょくに彫った仏像みたいにその寝顔は気品にかがやいていた。やや面長で下膨しもぶくれの豊かな相形そうぎょうである。何の屈託くったくもないようないびきすら聞かれた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「逢ったのだろう」さっきからちょっとの間に恐ろしく相形そうぎょうの変ったお宮の顔をみまもった。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)