百本杭ひゃっぽんぐい)” の例文
大川端おおかわばたなる元柳橋もとやなぎばしは水際に立つ柳と諸共もろとも全く跡方なく取り払われ、百本杭ひゃっぽんぐいはつまらない石垣に改められた。
自分は、大川端おおかわばたに近い町に生まれた。家を出てしいの若葉におおわれた、黒塀くろべいの多い横網の小路こうじをぬけると、すぐあの幅の広い川筋の見渡される、百本杭ひゃっぽんぐい河岸かしへ出るのである。
大川の水 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おそらく百本杭ひゃっぽんぐいは河水の氾濫はんらんからこの河岸かし橋梁きょうりょうを防ぐ工事の一つであろうが、大川橋(今の吾妻橋あずまばし)の方からやって来る隅田川の水はあだかも二百何十年の歴史を語るかのように
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「何、ここで……。すぐ其処の百本杭ひゃっぽんぐいあたりで、降ろして貰おう」
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或朝焼けの消えかかった朝、父と彼とはいつものように百本杭ひゃっぽんぐいへ散歩に行った。百本杭は大川の河岸でも特に釣り師の多い場所だった。しかしその朝は見渡した所、一人も釣り師は見えなかった。
土曜といわず日曜といわず学校の帰り掛けに書物の包を抱えたまま舟へ飛乗ってしまうのでわれわれは蔵前くらまえ水門すいもん、本所の百本杭ひゃっぽんぐい代地だいちの料理屋の桟橋さんばし橋場はしばの別荘の石垣、あるいはまた小松島こまつしま
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「——殿様、百本杭ひゃっぽんぐいで」
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)