病犬やまいぬ)” の例文
ただ順風をいのって船の出られるのをまって居るその間の怖さと云うものは、何の事はない、躄者いざり病犬やまいぬに囲まれたようなものでした。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「あのとりはどうしたのでしょうね」と、庄太は云い出した。「犬にゃあ病犬やまいぬというものがあるが、鶏にゃあ珍らしい」
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「近いにゃ、近いが、病犬やまいぬがいるで、夜は通れん」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「何だ、これは。病犬やまいぬではないか。」
鳥右ヱ門諸国をめぐる (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
「岡野ヘ引越シテカラ段々脚気モヨクナッテ来タカラ、息子ガ九ツノ年御殿カラ下ゲタガ、本ノケイコニ三ツ目所ノ多羅尾七郎三郎ガ用人ノトコロヘヤッタガ、或日ケイコニ行ク道ニテ病犬やまいぬニ出合ッテ、キン玉ヲ喰ワレタガ……」
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
毛の黄なる病犬やまいぬ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
病犬やまいぬ
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そんな病犬やまいぬの相手になつて、折角明るくなつた體をもう一度暗いところへ遣られては堪らない。はゝゝゝゝ。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「仔細もなしにみ付くような、そんな病犬やまいぬは江戸にゃあいねえや」と、彼は侍を尻目にかけていった。
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼女は次第に神経がたかぶって、物狂おしいほどに取りのぼせていた。ここでうっかりけしかけるようなことを云ったら、病犬やまいぬのような彼女は誰にくらい付こうも知れなかった。
半七捕物帳:03 勘平の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
四郎兵衞 仔細しさいもなしに咬み付くやうな、そんな病犬やまいぬは江戸にやあゐねえや。
番町皿屋敷 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)