略々ほぼ)” の例文
自分は人間を止めて、虚心平気で宇宙を横から眺めて居る心持に成つて見ると、宇宙に於ける人間の価値は略々ほぼ次の如くである。
人類の誇大狂 (新字旧仮名) / 丘浅次郎(著)
創傷は、顱頂骨と前頭骨の縫合部に孔けられている、円い鏨型の刺傷であって、それが非常なおでこであるために、頭顱の略々ほぼ円芯に当っていた。
後光殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
僕はやっとの事であの鳩がどの辺からやって来たか、略々ほぼ見当がついたのでこれから調査に出かけるんだ。それで鳩を
鳩つかひ (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
婦人解放とその全性に及ぼす影響に対する私の見解の根本的方面がこれによつて略々ほぼ読者に推察せらるる事と思ふ。
婦人解放の悲劇 (新字旧仮名) / エマ・ゴールドマン(著)
進歩的な婦人雑誌廃刊の事実と所謂モダン・ガールという流行語の発生とが、略々ほぼ時を同じくしているという社会的な事実は、何を語っているであろうか。
婦人と文学 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
或日、私は図書館に入って、鳥禽図解ちょうきんずかいを彼方此方としらべて見た。私には、黒い鳥の名が判らなかったからだ……西洋の鳥禽図の中に略々ほぼこの鳥に似通った鳥があった。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さう思つたら、彼等が現代の東京を歩いてゐるのも、略々ほぼ無理がないやうな心もちがした。
寒山拾得 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
処がこれと略々ほぼ同意見をこういう思いがけない、失礼ながらペラペラ雑誌の紙面で発見しようとは案外であった、弥之助は取りあえずその雑誌社へ向けて次のような葉書を書いた。
……斯様かような事情で、卒業論文銓衡の教授会議に対しては、学内一般の緊張した耳目が集中していたのでありますが、サテ、愈々いよいよ当日となりますと果して各教授とも略々ほぼ、同意見で
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この割合で計算を進めると、一カ月間に二百四十里、一年間に二千八百八十里、十年間には二万八千八百里を歩く勘定になって、世界一週をしたのと略々ほぼ同里程になるわけだそうな。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
といい、云々以下『風土記稿』に略々ほぼ同じく『郡村誌』には
マル及ムレについて (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
考えて見ても自分のその頃の心持は略々ほぼ察せられる。
自分だけの世界 (新字新仮名) / 辻潤(著)
創口が略々ほぼ正確な円をなしているのを見ても、この刺傷が瞬間的な打撃に依るものではなく、相当時間を費して圧し込んだ——と云う事が判るよ。
後光殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
されば其の終局も地質学上の各時代に一時全盛を極めて居た他の諸動物と同じく、恐らくは次の時代までに略々ほぼ全滅するを免かれぬものと見做すが適当であらう。
人類の将来 (新字旧仮名) / 丘浅次郎(著)
更に略々ほぼ同時代に成つた「伝記私言数則」はことごとくこのことに及んでゐる。
大久保湖州 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
推摩居士の年齢は略々ほぼ盤得尼と頃合だけれども、その相貌からうける印象と云えば、まず悉くが、打算と利慾の中で呼吸している、常人以外のものではなかった。
夢殿殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
略々ほぼその正しいことの見込みが附けば、尚その先へ理を推して進むのである。
芸術としての哲学 (新字旧仮名) / 丘浅次郎(著)
確か、三十年程前ライプチッヒ劇場にも、略々ほぼそれに似た、現象が起ったとか云うそうなんだよ
オフェリヤ殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
空闥と云う五十恰好の僧侶には、被害者と略々ほぼ同型の体躯が注目された。
後光殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)