画餅がべい)” の例文
旧字:畫餠
それがため、女優第一人者を、誠意をもって誤謬ごびゅうなく書残しておこうとしたことが画餅がべいになってしまったのを、大変残りおしく思う。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
大旆たいはいってしまった。ここにおいてか、官兵衛が舌頭の無血攻略も、苦心の地盤じばん工作も、一朝のまに、すべてが画餅がべいのすがたに帰ってしまった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すなわち朝権の衰微すいびを憤り、尊王の精神を鼓吹こすいして事を挙げようと企てたのであった。しかるにここに意外のことから計画は画餅がべいに帰することになった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そしてクリストフにたいしては、笑いながらその事実を承認することを大して拒まなかった。グライヨーは万事を非議し、人がしたがってる万事を非議していた。何もかも画餅がべいだとしていた。
然るに先生の突然の帰国でその計画も画餅がべいになったが残念でならぬ。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
たまたま或人が出て能楽界を振はせようとして会などを興した事などもあつたが、とかく流儀争ひなどのために子供のやうな喧嘩を始めて折角の計画も遂に画餅がべいに属するに至つたのは遺憾な事である。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
計画、画餅がべいでは物たりない。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
総じて官軍は、わけて義貞の旗は、派手な敗れ方をして、きのうの戦果も、いちどに画餅がべいとしてしまったのだった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とり逃がし、冬次郎なんどの手に入らば、一切計画画餅がべいとなる! ……殺す、斬る、息の根止める! ……放せお浦を、放せ放せ! ……放さぬとなら汝ともども!
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「織田が、長嶋から手を引いては、虚をついて、この信玄が、三遠の平野に家康をよび出してらそうとしたのも画餅がべいとなった。——危うし危うし」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
風紀その他を、立て直そうとこればかりは本気に、計画をして来たことが、老中失脚の一事によって、画餅がべいに帰してしまったことが、心外に思われてならないのであった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
南朝がたの望みも画餅がべいに帰して、賀名生はまた元のみじめな山中宮廷に返ってしまったが、より悲惨なのは、ここに拘置こうちされた北朝の三上皇と皇子らで、それは
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
破綻、敗北、すべて画策が画餅がべいに帰したとさとると
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)