生計向くらしむき)” の例文
娘とは格が違うからという意味で、できるだけ倹約したところで、現在の生計向くらしむきに多少苦しい負担の暗影を投げる事はたしかであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まちへお島をそっと住わしておこうと云う相談も出たが、精米所の補助を受けて、かつかつ遣っている浜屋の生計向くらしむきでは、それも出来ない相談であった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
女同志は重寶なもので、妻は既う内儀と種々いろ/\生計向くらしむきの話などをしてゐる。
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
持って生れた楽天的な広い横断面おうだんめんもあった。神経質な彼はまた誤解を恐れた。ことに生計向くらしむきに不自由のないものが、比較的貧しい階級から受けがちな尊大不遜ふそんの誤解を恐れた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それ其筈そのはづ実家さと生計向くらしむきゆたかに、家柄いへがら相当さうたうたかく、今年ことし五十幾許いくつかのちゝ去年きよねんまで農商務省のうしやうむしやう官吏くわんりつとめ、嫡子ちやくし海軍かいぐん大尉たいゐで、いま朝日艦あさひかん乗組のりくんでり、光子みつこたつ一人ひとり其妹そのいまうととして
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
女同志は重宝なもので、妻は既う内儀と種々生計向くらしむきの話などをしてゐる。
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)