生活なりはひ)” の例文
かくてこの身はやうなきしろものとなりぬ。たと羅馬ロオマわたりに持ち往きてらんとし給ふとも、盾銀たてぎん一つ出すものだにあらじ。かどある生活なりはひわざをも知らず。
生活なりはひの響、瀬の音、木の葉ずれ、そんなものが旅に出た當初の鮮かさを持つて彼に歸つて來た。が、それも永くは續かなかつた。心が重くなつて來た。
とはいへ、學識あり、才能あるものが、いつまでか一少女の情にかゝづらひて、目的なき生活なりはひをなすべき。今は天方伯も唯だ獨逸語を利用せんの心のみなり。
舞姫 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
生活なりはひの途なきめしひ等が赦罪の日物乞はんとてあつまり、かれ頭をこれに寄せ掛け 六一—六三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
確固しつかりした気立きだて、温かいこころ……かくまで自分に親くしてくれる人が、またと此世にあらうかと、悲しきお利代は夜更けて生活なりはひの為の裁縫をし乍らも、思はず智恵子の室に向いて手を合せる事がある。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
往来の真中に堆高うづだかく掻集めた白い小山の連接つゞきを見ると、今に家々の軒丈よりも高く降り積つて、これが飯山名物の『雪山』とうたはれるかと、冬期の生活なりはひ苦痛くるしみを今更のやうに堪へがたく思出させる。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
されどうがらが生活なりはひ
枯草 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
とはいへ、学識あり、才能あるものが、いつまでか一少女の情にかゝづらひて、目的なき生活なりはひをなすべき。今は天方伯も唯だ独逸語を利用せんの心のみなり。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
全羅馬の生活なりはひの脈は今此辻に搏動するかと思はる。既にして法皇の行列寺門を出づ。藍色の衣を纏へる僧六人にかせたる、華美なる手輿てごしに乘りたるは法皇なり。
いづれ冬期の生活なりはひ苦痛くるしみを感ぜさせるやうな光景ありさまばかり。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
われはこれより茅屋ばうをくのうちなる寡婦孤兒の憐むべき生活なりはひを敍し、賑恤しんじゆつの必要と其效果とに及べり。
されどこの山は猶ほ重霧の間に在りて、いつ往きつかんも、否、果して往きつきぬとも、我中心に満足を与へんも定かならず。貧きが中にも楽しきは今の生活なりはひ、棄て難きはエリスが愛。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)