甘味うまみ)” の例文
万一射ちころされたとしても散々さんざん甘味うまみな酒にれたあとの僕にとって『死』はなんの苦痛でもなければ、制裁とも感じない。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
郷士の口裏に、ちょっと変な意味が挾まりましたが、酒の甘味うまみに気をとられていて、さりとは気がつかず馬春堂先生
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるいは炊いた御飯へ酢と塩とを混ぜても出来ますが炊いた方が結構です。もし酢が悪くって甘味うまみが少ければ少しのお砂糖を加えてもようございます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
いてれてたところで、なにやらかさかさとした、丁度ちょうど張子細工はりこざいくのようなかんじがするばかり、そこに現世げんせあじわったような甘味うまみ面白味おもしろみもあったものではない。
何程どれほど甘味うまみのあると云ふではないが、さびのある落ちついた節廻しは一座をしんとさせることが出来た。金太郎と云ふ芸者がひよつとこ踊でよく喝采を博した。おもちやはつづみをうつ。
二黒の巳 (新字旧仮名) / 平出修(著)
この山と谷を越えて、フォームは漸く甘味うまみを盛って来るのである。この時の上に熟して行くところの、成長そのものを筋肉の中に味う気分こそ、スポーツマンのもつ最も得意な微笑である。
近代美の研究 (新字新仮名) / 中井正一(著)
と婆さんは、言葉に甘味うまみを付けて、静かに微笑わらいながら、そう言った。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
彼の性格を味わえば味わうほど甘味うまみを感ずる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)