甘受かんじゅ)” の例文
……『真鍮しんちゅうの城の眷族けんぞくども』に迫害されるという事も、こういう意味から云う時は、肉身刑罰の一つとして甘受かんじゅすべきものかもしれません
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
外国の力をりて政府を保存ほぞんせんとはかりたりとのひょうごときは、けっして甘受かんじゅせざるところならん。
畿内きだいに於けるこの対立ほど明確ではなかったにしても、地方に於ける豪族は各〻土地を私有して、独立した支配者として割拠かっきょしており、天皇家の日本支配は必ずしも甘受かんじゅせられていなかった。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
それでは、自ら顧みてやましくなければ、そのやましくない行為が、どのような結果を来たそうとも、士たる者はそれを甘受かんじゅしなければならないはずだ。なるほどそれは一応そうに違いない。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
と私はひじで小突いてやった。敵は甘受かんじゅした。もう味方になったのだった。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
けれどこのひとは細川藤孝が常にめてやまない賢夫人であって、よわい五十になってもそうしたのみ児や腕白に取り巻かれている境遇を心から甘受かんじゅして、むしろ生涯の満足としているような姿だった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)