瑞兆ずいちょう)” の例文
修理 ばけるわ化るわ。御城の瑞兆ずいちょう、天人のごとき鶴を御覧あって、殿様、鷹を合せたまえば、鷹はそれて破蓑やれみのを投落す、……言語道断。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし人々はこれこそこの場所が世界の主都となる瑞兆ずいちょうであるということを信じて疑わなかったとある。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
今や天下にありては、相将その相将に非ず民心動揺して天朝の恢復と胡虜剿滅そうめつの天の瑞兆ずいちょうあるを見る。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
新年に降った雪に瑞兆ずいちょうを託しつつ、部下と共に前途を祝福した、むしろ形式的な歌であるが、「の」を以て続けた、伸々のびのびとした調べはこの歌にふさわしい形態をなした。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
実際、明るい青空からお札がちらちら降って来たのを目撃したと言うものがあり、何かこれは伊勢太神宮のお告げだと言うものがあり、豊年の瑞兆ずいちょうだと言って見るものもある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これは瑞兆ずいちょうだ。小さな魂が新しい肉体に宿って現われて来るには、またとない潮時である。生れて来る子のために祝ってやれば、たったこれだけのことでも、瑞兆といっても好い。
それのはっきりしている上層中流の人士でもかつての自国の歴史にちょうして、その時代時代に適応した解釈を下し、自分たちの人為をすべて天象や瑞兆ずいちょうのせいにして、いわゆる機運をかも
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「平家のために流罪にならずばこの瑞兆ずいちょうもみることができなかった」
人は見て奇瑞きずいとするが、魔が咲かせたかも知れないんです。反対に、お誓さんが故郷へ帰った、その瑞兆ずいちょうあらわれたとして、しかも家の骨に地蔵尊を祭る奇特がある。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「世の中が大きく変わる時には、このくらいの瑞兆ずいちょうがあってもいいなんて、そんなことをさももっともらしく言い触らすものもありますぜ。なんだかわたしはきつねにでもツマまれたような気がする。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)