玩弄がんろう)” の例文
その一つの現象としては古典の玩弄がんろう、言語の遊戯がある。芭蕉はもう一ぺん万葉の心に帰って赤裸で自然に対面し、恋をしかけた。
俳諧の本質的概論 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
あれが、近江の胸底にある喬之助への嫉妬を掻き立てて、ああ執拗に喬之助を玩弄がんろうしつづけ、ついに大事……あの刃傷にんじょうとこの騒動を捲き起すに到ったのだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
今となっては、自分はこれまで幻影に玩弄がんろうせられていたような気がした。すべて社会的生活は非常な誤解の上に立っていた。その誤解の源は言語にあった……。
そしてそれらを玩弄がんろうした痕跡歴然たるものがあり、のみならず、子宮だけがたくみに摘出てきしゅつして持ち去ってあったことなど、これらはすべて前回に記述したとおりである。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
臨時の便利において如何いかんというに、人間世界の歳月を短きものとし、人生を一代限りのものとし、あたかも今日の世界を挙げて今日の人に玩弄がんろうせしめて遺憾なしとすれば
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
鍬形蕙斎くわがたけいさい上田公長うえだこうちょうの略画の版本など吾々は児供の玩弄がんろう品と思っていたくらいであるに、ここの趣向が面白い、ここがうまいなどとしきりと面白がっていた、ある時などは
竹乃里人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
大東京のマン中で開業する……そうして相携あいたずさえて晴れの故郷入りをする……と言う事を終生の目的としておったので、故なくして他人の玩弄がんろうとなる事を極度に恐れた彼女は
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
指で人をさすなんかは失礼の骨頂だ。習慣がこうであるのにさすが倫敦ロンドンは世界の勧工場かんこうばだからあまり珍らしそうに外国人を玩弄がんろうしない。それからたいていの人間は非常に忙がしい。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
人をにしたり、人を泣かせたり笑わせたり、人をあえだりもんだりして玩弄がんろうする。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
宗教などは野蛮未開の遺物、愚夫愚婦の玩弄がんろう物にほかならず等と申しています。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
それは単に小さな子供らの愛撫あいぶもしくは玩弄がんろうの目的物ができたというばかりでなく、私自身の内部生活にもなんらかのかすかな光のようなものを投げ込んだように思われた。
子猫 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
昇なんぞは蚊蜻蛉かとんぼとも思ッていぬが、シカシあの時なま此方こっちから手出をしては益々向うの思う坪にはまッて玩弄がんろうされるばかりだシ、かつ婦人の前でも有ッたから、為難しにくい我慢もして遣ッたんだ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
困った事にはいつのまにか蜥蜴とかげって食う癖がついた。始めのうちは、捕えたのは必ず畳の上に持って来て、食う前に玩弄がんろうするのである。時々大きなやつのしっぽだけを持って来た。
ねずみと猫 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)