物乞ものご)” の例文
この附近の竹林に住んでいる物乞ものごいに、二、三度食べものを恵んでやったことがあるから、そのおこもであろうと気をゆるした。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
料理店の給仕——通行人に青枝付きの香橙オレンジを差し出して路上で物乞ものごいをし、追従ついしょう的な流し目を使う、聖ヨハネみたいな少年。
母親のために物乞ものごいに出されている子供たちを、見たことはないのかい? そういう母親たちがどこで、どんな風に暮らしているか、僕はちゃんと知っている。
ともしころのことでありまして、わたしはその日、そのお宅へ、物乞ものごいに参ったのでございます。
怪しの者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
青年がその日の生活に困って、物乞ものごいをするのだと思ったからである。けれども、自分はすぐ勘違いをしたことに気づいた。青年の服装はきちんとして靴も光っていた。
謎の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
恋敵の前に頭を下げて、物乞ものごいをしている自分自身が、此上このうえもなくみじめに見えた。
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
バイオリンとリスのかごとを持つて、裏通りをぬけて、町外れにさしかゝりますと、あの三人の盲人が、道ばたにかゞんで、帽子を差出して、通りかゝる人々に物乞ものごひをしてゐました。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
中にはそういう物乞ものごいに慣れ、逆に社会の不合理を訴え、やる瀬のない憤りを残して置いて行くような人々も少なくない。私は自分に都合のできるだけの金をそういう人々の前に置き
分配 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「べらぼうめ、物乞ものごいがそんな錆刀さびがたななんぞをヒネクリまわしたところで、だれがしりごみするものか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「金貨が一枚あれば、これから町へ行つて、すぐに物乞ものごひをしなくてもいゝ。づ、宿屋へはいつて、久しぶりにうまい御馳走ごちそうをたべて、やはらかいベッドに寝て、ぐつすり眠らうぢやないか」
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
「——物乞ものごいじゃないか、てめえは、ふざけた奴だ、顔を貸せの、喜平だのと」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「待たねえか、そこへゆく物乞ものごい」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)