牟子むし)” の例文
わたしは昨日きのうひる少し過ぎ、あの夫婦に出会いました。その時風の吹いた拍子ひょうしに、牟子むし垂絹たれぎぬが上ったものですから、ちらりと女の顔が見えたのです。
藪の中 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わたしは昨日きのふひるすこぎ、あの夫婦ふうふ出會であひました。そのときかぜいた拍子ひやうしに、牟子むし垂絹たれぎぬあがつたものですから、ちらりとをんなかほえたのです。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
牟子むしをしたる旅の女 私はちと足が痛うなつた。あの乞食の足でも借りたいものぢや。
往生絵巻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あのをとこうまつたをんなと一しよに、關山せきやまはうあるいてまゐりました。をんな牟子むしれてりましたから、かほはわたしにはわかりません。えたのはただ萩重はぎがさねらしい、きぬいろばかりでございます。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あの男は馬に乗った女と一しょに、関山の方へ歩いて参りました。女は牟子むしを垂れて居りましたから、顔はわたしにはわかりません。見えたのはただ萩重はぎがさねらしい、きぬの色ばかりでございます。
藪の中 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)