いき)” の例文
休茶屋で、ラムネにかわいた咽喉のどいきる体をいやしつつ、帰路についたのは、日がもう大分かげりかけてからであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
言うまでも無くが光を以て天下をおおおう、天下をして吾が光を仰がせよう、といきり立って居るのだ。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
見ると、父はなおまだ母を前においていきり立っている。ぼくは父の後ろへ廻った。そして、いきなり父の頭上から、バケツの水をざっと打ッかけてしまった。寒中の冷水である。
「何て莫迦ばかなまねをしてくれたんだ」父親はお島に口をかせず、いきなりいきり立って来たが、養家の財産のために、何事にも目をつぶろうとして来たらしい父親の心が
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「あれほど、わしがいってあるのに、聞きわけのない。……こうして働いている汗にも、蠅もたかればあぶも来る。そんなものに、いちいちいきり立っていては何もできん。——さあ仕事仕事仕事で忘れろ」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)